“樹氷の森にはね、
魔女様がいるんだよ”
“全てを凍らす、怖い魔女様が”
“だから、森へ行ってはいけないよ”
彼は樹氷の森を一人行く。
目指すは森の奥深く、千年樹氷…
“兄さん、町の話を聞かせて”
優しく笑う“彼女”は彼にとって、唯一の家族だった。
幼い頃に両親は森へ行き、二度と帰ってはこなかった。
それ以来、彼は“彼女”と貧しくも幸せに、二人で仲睦まじく暮らしていた。
しかし、“彼女”は生まれつき不治の病を患っていて、
もうあまり命が持たないと医者に言われていた。
たった一人の家族、絶対に死なせたくない。
彼は1つの言い伝えを思い出す。
『樹氷の森の奥深くの千年樹氷の花—薬氷花は、どんな病をも治す』
これしかない、“彼女”を救うには、この方法しか…。
彼は、村に伝わる恐ろしい魔女の言い伝えなど忘れて、森へ走った。
“妾の領域を犯す愚か者よ…何用だ?”
千年氷樹の元まで行くと、声が聴こえ、白銀の髪を腰まで伸ばした美しい女が現れた。
『病気の妹がいるのです。
その千年樹氷の花—薬氷花を分けてはもらえませんか』
そう言うと女—“魔女”は意地悪く笑い、指を鳴らす。
“10年程前にも同じ理由で来た人間がいたが…
教えてやろう、何かを得るには何かを捨てなくてはならない”
すると、彼の足元から全身が凍り始める。
“お主の妹に薬氷花をやろう—ただし、
お主にはここで妾の美術品になって貰う”
“魔女”は勝ち誇った様に高笑いを上げる。
“妾は、美しきものが好きでな。
お主の様な愚かな人間も、凍らせば、美しき美術品になる。
感謝するがよい、妾の美術品になれる事を!”
段々と、感覚が無くなり、意識が薄れる。
薄れ行く意識—否、消え行く命の中で思い出すのは“彼女”の事ばかり。
—あぁ、最後にお前の顔が見たかった…でも、お前は、
意識が途切れる最後の瞬間、彼は呟く。
『幸せに…なりな…さ…い』
暫くして、狂い咲きをした千年樹氷の前に佇む、
1つの氷像がとある少女によって見つけられる—
†あとがき†
前回の『千年樹氷の氷像』の
続きです。
前回出てきた“彼”と“彼女”と関係…があるかは秘密です←
大体の人は私と同じ考えだと思いますがねww
それにしてもこの兄ちゃん妹大好きだなwwwwww
最初兄妹なのにちょっとイケない関係にしてたなんて口が裂けても言えない←
あと少しだけこの“千年樹氷”シリーズは続きますが、
気になる方は是非とも最後までお付き合いください。
では今回はこの辺で!
おるぼわーノシ