「ここ、どこ・・・?」
少女は唯唖然と空を、景色を、目の前に広がる世界を見つめた。
少女の目の前に広がる景色は、少女が知らないものだった・・・。
―創りの国のアリス―
―いつもの午後、いつも通りの晴れた天気。
木の幹によっかかっている深い蒼色の髪の少女-アイリーク・リデルは空を仰いだ。
「あーあ・・・いつも通り」
―いつも通りの変わらぬ日々。
平日は学校へ、休日の午後は庭の木陰で一人でお茶と読書。
平凡で、幸せな筈なのに。
今の生活の方が全然良いのに。
何かが足りなかった。
「借りてきた本も全部読み終わったし・・・戻ろう」
何が足りないのかは、自分でもなんとなく判っている。
「毎日、同じ事ばっか・・・」
そう、彼女は退屈していたのだ。
同じ毎日に。
朝と夜がひたすら繰り返されるだけの毎日に。
それでも、何かが起こるという事はないので、いつもの日常を楽しもうとする。
だって、それでもあの村と比べたらここの生活は良いものだから。
もう、周りの視線を恐れなくてもいいから。
ここの人達は私に石をぶつけないから。
勿論、自分が贅沢者だという自覚は十分にある。
ふと、空をもう一度見上げたその時。
-そんな人生で良いんですか?
「え・・・?」
-つまらないなら、こっちに来ましょうよ。
-きっと、貴女が楽しめる毎日が待っていますよ。
-だから、来てください。―アイリ。
「なに、これ・・・頭の中が・・・ヘン・・・!?」
頭の奥底から、声がする感じ―気持ち悪いっ・・・
「なんなの・・・っ!?意味、判りま・・・せんっ・・・」
-そうですねぇ・・・言葉で説明しても判らないでしょう。
-だから・・・ほら、こちらへお出でなさいな。
謎の声がそう言うと、妙な浮遊感が一瞬だけあり・・・・―落ちた。
「きゃあぁぁぁぁぁ!!」
浮遊感の後、アイリークは落ちていった。
―突如現れた穴に。
落ちていく穴の途中で、アイリークの意識は途絶えた・・・。